海にまつわる言葉9選!青海原や白砂青松、旅情を増す海の表現

見渡す限りの青を想わせる青海原や、白と緑のコントラストが美しい白砂青松、さざ波が水面につくり出す波の綾……海にまつわる美しい言葉を知ると、思わず海に旅したくなりませんか?

旅情を増してくれる海の表現や、旅のお目当てにしたい海の光景にまつわる言葉を集めました。

旅情を増してくれる海の表現

旅先で海を感じて過ごす時間は、穏やかなひととき。はるか彼方まで広がる紺碧の海、打ち寄せる波の音……海を感じていると、いつしか心が安らいでいることに気づきます。

海辺の露天風呂で聴こえる「潮騒」や、海と空がひと続きになったかのような「水天一碧」など、旅情を増すような風情ある海の表現を紹介します。

海にまつわる言葉(1)青海原(あおうなばら)

青海原とは、一面に青く、広々とした海を表す言葉です。大海原もほぼ同じ意味。でも「青」がつくことで、青さが際立つ気がします。

一言で青と言っても、海にはさまざまな青があります。海に行ったら、どんな青なのか言葉にしてみると、青の美しさがより鮮明に感じられます。

たとえば、どこまでも透き通るような青なら、ラムネのような水色をした海、抜けるようなコバルトブルーの海、翡翠色にまどろむかのような海。いろいろ表現できます。

そして、濃く鮮やかな海。夏空をそのまま写し取ったかのような深い紺碧の海、冴えた瑠璃色の海、チューブからそのまま絵の具をなすりつけたような紺青色の海……。

濃い青は、白い砂浜とのコントラストが美しく、まさに夏全開といった風情です。

海の青は、一日の中でも刻々と色を変えていきます。そして光の加減によって、美しいグラデーションを見せてくれます。

海辺に旅に出かけたら、どんな青と出会えるのでしょうか?青海原という言葉を思い浮かべながら、青とじっくり向き合いたいものです。

海にまつわる言葉(2)潮騒(しおさい)

潮騒とは、潮が満ちるときに立つ波の音。波が寄せてくるたびに、ざわざわと聞こえる、あの音です。

浜辺に波が打ち寄せると、波が崩れて海水が音を立てます。そして潮に引かれた砂や石ころも、音を発します。

水の音と、戻る波に引かれていく砂や石の音。心地よく溶け合うことで、潮騒のざわめきが生まれます。まさに「潮が騒ぐ」なのですね。

ちなみに潮が満ちるのは、主に“月の引力”ゆえ。月に引き寄せられて海水が盛り上がるのです。これが「潮が満ちる」理由。月が引き起こしている音だと思うと、神秘的に感じられます。

海景色が眺められる露天風呂。ゆるりと湯に身を沈め、目を閉じれば、聴こえてくるのは潮騒の音。繰り返す波のリズムは、何よりの骨休めです。

「波の音が聞こえる」というよりも、「潮騒が聞こえる」とったほうが、風情が感じられます。大事にしたい美しい言葉の一つです。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

潮騒改版 (新潮文庫) [ 三島由紀夫 ]
価格:506円(税込、送料無料) (2020/3/21時点)

海にまつわる言葉(3)水天一碧(すいてんいっぺき)

露天風呂で潮騒に身を委ねる豊かな時間。ふと水平線に目をやると、気づくのが、「水天一碧」です。

水天一碧とは、海と空がひと続きになり、一様に青々としている様子。空と海の境目が分からないほど、見渡す限りの青。海辺にいるからこそ出会える贅沢な光景です。

特に水天一碧が感じられるのが、朝凪(あさなぎ)の時間帯。朝凪とは、陸風から海風へと風向きが反対になる朝方、一時的に風がやむことを指します。

風が吹かなければ、波も穏やかになります。しばしの静寂の時間です。朝凪で静まり返った青い海と、夏の青空。まさに水天一碧です。

ちなみに、なぜ風向きが変わるかというと、「陸と海」、もっと言えば「土と水」の性質の違いです。

陸と海は、同じ太陽の光を浴びても、温まり方が違います。先に温度が高くなるのは陸、遅れて海の温度が上昇します。これは、土に「温まりやすい性質」があるからです。

十分に温かくなった陸では、上昇気流が起こります。温められて空気が軽くなるので、結果的に空気が上がっていくのです。

陸の空気が上がり始めると、どうなるでしょうか?空いた部分に吸い寄せられるように、海から風が吹き込みます。海から陸へと吹く風が「海風」。この選手交代の合間が「朝凪」というわけです。

朝凪は夏の季語。ぴたりと風が止まり、「蒸し暑い」というイメージを内包する言葉でもあります。

でも静まり返った海には、堂々たる雰囲気があります。そして、これから始まる長い一日に向けて、ゆっくりと準備をしているような、そんな風景にも見えます。

海にまつわる言葉(4)波の綾(なみのあや)

さざ波がつくり出す水面の模様を「波の綾」と呼びます。水面にできた細やかな模様を綾織物にたとえた、美しい言葉です。

波の綾は、とても優しげな表情。夕日を受けて輝くと、繊細にゆらめきます。船が通った場所に浮かび上がる跡白波(あとしらなみ)も加わると、絵画を見ているような美しさです。

ちなみに池の綾は、別名「波の皺」(いけのしわ)とも呼びます。たしかに皺のようにも見えますね。

皺といっても、優しい印象の皺。まるで幸せな日々を想わせる、笑いジワのよう。海が見せてくれる笑いジワだと思うと、細やかさが穏やかさにつながって見えます。

旅のお目当てにしたい海の風景

一言で海といっても、表情はさまざま。青々と松林が生い茂った白砂青松の海もあれば、夕暮れから漁火が水面を柔らかく照らす海もあります。

旅のお目当てにしたい、海の風景にまつわる言葉を紹介します。

海にまつわる言葉(5)白砂青松(はくしゃせいしょう)

白砂青松とは、「白い砂」「青々と生い茂った松林」のこと。海岸線のどこまでも、白と青が続く美しい風景をたとえる言葉です。

白砂青松はまさに、日本的な景観というべきもの。特に、日本三景の一つに数えられる京都・天橋立は、白砂青松の景勝地として有名です。

言わずと知れた天橋立。海を二つに分けるかのように、美しい白砂と松林の浜が続きます。全長およそ3.6km、まるで“海の架け橋”です。

同じく、日本三景の一つである宮城・松島。ここも白砂青松の眺めが名高い景勝地です。

松島の特徴は、何と言っても独特の入り組んだ地形。なんと260余りの島が点在するのだとか。古くから名所として知られ、松尾芭蕉を魅了した、美しい風景です。

ちなみに、海岸沿いの松林を見ているとき、傾いてしまっている木を見かけることがありませんか?まるで地を這うようにも見えるあの松を「磯馴れ松」(そなれまつ)と呼びます。

長年風を受けるうちに、枝や幹が風になびき、傾いてしまった……それが、磯馴れ松です。まさに字のごとく、「磯」(海岸)に「馴れた」松なのですね。

磯馴れ松が生まれるのは、長年の歴史があるからこそ。そう想うと、風格が感じられます。と同時に「この地で生きて行こう」という松の意思すら感じます。

海にまつわる言葉(6)漁火(いさりび)

漁火とは、イカやサンマなどの魚を集めるために、漁船でたく火のこと。暗闇に浮かび上がる灯りを見ると、海に旅していることを実感させてくれます。

漁火で有名なのが、山口県・長門市油谷(ゆや)東後畑(ひがしうしろばた)地区です。

高台から日本海へとなだらかに続く斜面には、およそ210枚もの棚田が並びます。ここは「日本の棚田百選」にも選ばれている棚田と漁火を、同時に見ることができる場所なのです。

油谷沖の日本海は、イカ漁が盛んな場所。漁が最盛期を迎える5月末から夏にかけての夜は、棚田の向こうに無数の漁火が浮かび上がります。

静まり返った、真っ暗な夜の海。点々と浮かび上がる、優しい光。なんと幻想的なのでしょう!

漁火は、今では集魚灯と呼ばれるライトを使います。昔は松明(たいまつ)や篝火(かがりび)などに火をつけ、魚を呼び寄せていました。まさに「漁のための火」だったのですね。

昔から続く伝統に想いを馳せながら、美しい漁火を眺めるひととき。心まで明るく照らしてくれそうです。

海にまつわる言葉(7)夕凪

夕凪とは、海風から陸風へと切り替わるとき、風がぴたりとやみ、波も静かになる時間帯のことを指します。瀬戸内海の夕景「瀬戸の夕凪」は、ことに美しいと有名です。

赤く染まった夕焼けの空、空の色を映して赤く染まる瀬戸内海。ほっとするような光景です。

夕凪のときには、朝凪と同じく風がやみ、しかも西日も当たります。じめじめして、熱気に包まれる時間帯。でも、オレンジ色に染まり、静かに佇む海には風情があると思いませんか?

夕凪は、長い夜を迎えるための準備の時間。海にとって、つかの間の休息なのかもしれません。ただひたすらに、穏やかな凪の海を眺めるのも、旅の楽しみ方の一つと言えるでしょう。

海にまつわる言葉(8)鳴き砂

鳴き砂とは、砂の上を歩くと「キュッキュッ」と鳴る砂のこと。鳴り砂とも呼ばれ、美しい海岸の砂浜でしか出会えない現象です。

現在も鳴き砂を愉しめるのは、日本でおよそ30か所。島根県の「琴ヶ浜」や、石川県の「琴引浜」、そして京都府の「琴引浜」などが有名です。

特に琴引浜は、全長およそ1.8km。日本最大級の規模を誇ります。日本海に面した海岸はほとんどが鳴き砂で、歩くと美しい砂の音が響きます。

ちなみに鳴き砂の正体は、砂に含まれている石英(せきえい)です。石英は、きらきらと光る鉱物。踏みしめたときの表面摩擦によって「キュッキュッ」と鳴るのです。

ただし、ただ石英を踏むだけでは、鳴き砂にはなりません。石英がたくさんあることが大前提。しかも砂粒がきれいであることも条件です。砂粒が汚れていると鳴かないのです。

1.8kmにも及ぶ琴引浜には、美しい松林が並びます。そう、白砂青松の眺めです。琴引浜は、「日本の白砂青松100選」に選ばれた海でもあるのです。

美しい眺めと、鳴り響く砂の音。その風情は古くから文人墨客を魅了し、明治時代には、与謝野鉄幹と晶子夫妻も訪れました。

たのしみを抑へかねたる汝ならん 行けば音を立つ琴引の浜
与謝野鉄幹

夫婦が楽しんだ鳴き砂の音は、いまも訪れる人を愉しませてくれています。これからも守り続けたいものです。

海にまつわる言葉(9)波の花

波の花とは、波が白く泡立つのを、花にたとえていう言葉です。波の花は、日本海の冬の風物詩。なかなか出会うことのできない光景です。

波の花の名所として知られているのは、石川県輪島市の「曽々木海岸」や「鴨ヶ浦」北海道留萌(るもい)市の海岸新潟県佐渡市の長手岬や、椿尾の海岸も、波の花の名所として有名です。

日本海沿岸は冬になると強い風が吹き、波が岩に打ち付けられます。実は、波の花の正体は、海中に漂う植物性プランクトンや海藻。ネバネバとした粘液が、冬の波にもまれるうちに石けん状に泡立ち、花のようになるのです。

波の花の見頃は、11月~2月。極寒の日本海、そして荒波だからこそ出会える光景なんです。必ず出会えるものではありません。でも、だからこそ人々を魅了するのでしょう。

まとめ

季節ごとに、そして時間帯によって海は色を変え、表情を変えてゆきます。何もせずただただ海を眺め、波音に耳を傾ける時間は、とても贅沢なひとときです。

海に囲まれた島国・日本には、海を表す美しい言葉がたくさん存在します。海の言葉を思い浮かべながら、海を愉しみたいものですね。

スポンサーリンク
レスポンシブ広告(1)言葉の庭
レスポンシブ広告(1)言葉の庭

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レスポンシブ広告(1)言葉の庭